宇多田ヒカル「初恋」歌詞の意味や曲に込められた想いとは?

Hatsukoi02_pic(出典: http://www.hmv.co.jp/newsdetail/article/1712071021/)

宇多田ヒカルさんの7枚目アルバムのリード曲で、そのアルバムと同じタイトルにもなっている「初恋」。

「First Love」を想起させる「初恋」という原点回帰のような言葉が印象的なこの曲。

宇多田ヒカルさん本人も「自分の中ですごくしっくりきた(タイトル)」と語るこの「初恋」には、他者との繋がりを求めるという、人間が本能的に抱く想いや、その時に生まれる感情で溢れています。

一言一句深く考えさせられる宇多田さんの言葉。

今回は、この「初恋」について、歌詞の意味や曲に込められた想いを探っていきたいと思います。

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宇多田ヒカル「初恋」歌詞の意味や曲に込められた想いとは?

「初恋」ー 宇多田ヒカル
作詞: 宇多田ヒカル
作曲: 宇多田ヒカル

うるさいほどに高鳴る胸が
柄にもなく竦む足が今
静かに頬を伝う涙が
私に知らせる これが初恋と

I need you, I need you
I need you, I need you
I need you, I need you
I need you, I need you

人間なら誰しも
当たり前に恋をするものだと
ずっと思っていた だけど

もしもあなたに出会わずにいたら
誰かにいつかこんな気持ちに
させられたとは思えない

うるさいほどに高鳴る胸が
勝手に走り出す足が今
確かに頬を伝う涙が
私に知らせる これが初恋と

I need you, I need you
I need you, I need you
I need you, I need you
I need you, I need you

どうしようもないことを
人のせいにしては
受け入れてるフリをしていたんだ
ずっと

もしもあなたに出会わずにいたら
私はただ生きていたかもしれない
生まれてきた意味も知らずに

言葉一つで傷つくような
ヤワな私を捧げたい今
二度と訪れない季節が
終わりを告げようとしていた
不器用に

欲しいものが
手の届くとこに見える
追わずにいられるわけがない
正しいのかなんて本当は
誰も知らない

風に吹かれ震える梢が
陽の射す方へと伸びていくわ
小さなことで喜び合えば
小さなことで傷つきもした

狂おしく高鳴る胸が
優しく肩を打つ雨が今
こらえても溢れる涙が
私に知らせる これが初恋と

I need you, I need you
I need you, I need you
I need you, I need you
I need you, I need you

宇多田ヒカルさんの「初恋」を聴くと、恋に色々な形はあれど、恋をした時に抱く感情は普遍的なものなのかもしれないと改めて考えさせられます。

正に「人の性」とも言えるほどに抱く共通の想い。
特にそれは、

◯ 他者と関わることでしか自分の存在を確認することができないこと
◯「初恋」は喜びと悲しみの二面性でできていること
◯ 人間は求め合う生き物であるということ

という点において突出しているように感じます。

【1番】
もしもあなたに出会わずにいたら
誰かにいつかこんな気持ちに
させられたとは思えない

【2番】
もしもあなたに出会わずにいたら
私はただ生きていたかもしれない
生まれてきた意味も知らずに

宇多田ヒカルさん本人がインタビューで述べていますが、「初恋」の作曲の背景には「他者との関わり合いの中で、自分を知る、自分と向きあうこと」というテーマがあります。

上の歌詞ではこの「他者との関わり(初恋の人との関わり)」が教えてくれる本当の自分について歌っているような気がします。

極端な話、地球上に自分しか存在していなくて、他人との関わりが皆無だとすれば、自分のことを深く知ることはできないでしょう。
自分のことを比べる対象も無いですし、生き方について何が正解なのかという疑問すら浮かばないと思います。

他人と関わることによって初めて知らなかった自分の姿が見えてくるものですし、自分のことを深く理解するキッカケが生まれます。
特にその相手が初めて恋をした人であれば、感情の高鳴りと相まって自分の記憶に深く刻まれる。
相手のこと、自分のこと、その存在を初めて強く意識するのが「初恋」という事象なのかもしれませんね。

二度と訪れない季節が
終わりを告げようとしていた
不器用に

「二度と訪れない季節」という言葉の二面性がフルに活かされている部分ではないでしょうか。

もちろん初恋の人がそのまま人生のパートナーとなるケースもあるとは思いますが、大半の方にとって初恋には、

出会えたことによる喜び
失ってしまうことの悲しみ

という「始まり」と「終わり」がつきまといます。

宇多田ヒカルさんは「初恋」について以下のようにも語っています。

恋の始まりとも終わりともとれるように書いています。初恋というのは、それを自覚した瞬間から、それ以前の自分の終わりでもあるので。

このコメントを見ると、初恋をした人物が初めて恋をしたことの喜びと、その恋が終わってしまう悲しみ、
「初恋」を知らなかった頃の自分という人生の一章が終わったことを指しているように思えます。

聴く人の状況や感情によって色々な受け取り方が生まれるところもこの曲の魅力の一つでしょう。

そして、

欲しいものが
手の届くとこに見える
追わずにいられるわけがない
正しいのかなんて本当は
誰も知らない

という歌詞や、

小さなことで喜び合えば
小さなことで傷つきもした

という部分には一語一句が胸に突き刺さる好きな人との会話や、想いを寄せる相手を追わずにはいられないという衝動が表現されているのでしょう。
また、曲の要所で繰り返されるI need you」(私はあなたが必要)。という言葉に集約された、「人は求め合う生き物である」という宿命を感じさせられます。

狂おしく高鳴る胸が
優しく肩を打つ雨が今
こらえても溢れる涙が
私に知らせる これが初恋と

そして日本語の最後となっている歌詞に出てくる「狂おしく高鳴る胸」、「」、「」。
すこしネガティブな印象を受ける言葉が並んでいる部分ですが、私はここに「初恋」の美しさが表現されているのではないかと思います。

初恋はよく甘酸っぱいと言われることがありますが、いくら悲しい思いを経験したとしても、時間が経って「あの頃」を振り返ってみると美しく見えてくる。
曲全体に少し悲しみを連想させる言葉が多く使われているのにも関わらず、聴いた後に抱かされるこの曲の「美しさ」は、まるで美化された「あの頃」を想う感情。

それだけ人の心に寄り添っている「初恋」の歌詞には脱帽の一言です。

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「初恋」と『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』の関係について

宇多田ヒカルさんの『初恋』は、TBS系ドラマ『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』のイメージソングとして起用されていました。

作者である神尾さんの代表作『花より男子』の続編である同漫画は、学園を舞台に繰り広げられるラブコメディーですが、「初恋」作曲にあたって、宇多田さんはそのストーリーに組み込まれた人間の本質的な部分に目を向けられていたようです。

『花のち晴れ』の原作を読んであらためて気付かされたんですが、神尾葉子さんの作品は、一見、恋愛が繰り広げられる学園もののようで、実は年齢性別を問わない社会や他者との関わり方、本質的な意味での自分との闘いのプロセスが描かれているんですよね。私、本来、少女マンガってあまり得意じゃないんですけど、神尾さんの作品はだから好きなんだなって。それに気付いたら、曲も歌詞もどんどん膨らんでいきました。

人が生きていく上で本能的に求める他者との繋がりや、その繋がりの中で生まれる自分との葛藤。

どのような想いから宇多田ヒカルさんの曲が生まれているのかを知ると、同じ曲でもまた違ったふうに聴こえてくる気がしますね。

終わりに

Hatsukoi01_pic

(出典: https://www.atpress.ne.jp/news/157679)

いかがだったでしょうか。

今回は、宇多田ヒカルさんの「初恋」について、その歌詞の意味や曲に込められた想いを考えてみました。

当時15歳で発売されたデビュー曲「Automatic」で衝撃を受けた方も多いと思いますが、ヒッキーの愛称で親しまれたあのデビューの頃から月日は流れ、宇多田ヒカルさんの音楽活動は20周年を迎えました。

Hatsukoi01_pic(出典: https://otekomachi.yomiuri.co.jp/enta/20180517-OKT8T81113/)

そんな宇多田さんが初期の『First Love』を想起させる『初恋』というタイトルでアルバムをリリースするのは、ファンの方にとっても非常に感慨深いものだと思います。

多くの人の思い出と共に時代を彩ってきた曲が多い中、改めて宇多田さんの音楽性の豊かさが胸に染みる今回の「初恋」。

これからも素敵な音楽をファンに届け続けてほしいですね。

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